あれは約3年前。
私はある王子に会った。
場所はNYにある某たこ焼きや(バイト先)。
私はいつものように働いていた。一緒に働いていたのはうちのアーティストIさん。
王子は来た。Iさんはすでに彼のことをご存知のよう。
二人は話す。
そして私もその会話に入る。
王子はクエート出身。父はもちろん王様で政治をまかされた身。王子の名はスルタン(アラビア語で王様)。
彼は黒人。彼の話によると、母親がスーダン出身なので、彼の肌色は黒いとのこと。服はもちろんイスラム系。
スルタンは頭がいい。
早いうちから進級しまくって、16歳の若さでイギリスのオックスフォードに入学。大学もあれよこれよと言う間に卒業。現在脳外科医。NYには国連関係の仕事で来ている。
Iはアーティスト。スルタンも絵を描く。スルタンの絵は国連に飾られている。
私はライター希望。スルタンも文を書く。スルタンは小説を出版したことがある。
ふーん。
すごいねとは言っていたもの、われらは特に彼に食いつかず。だってお世辞にも格好いいっていえないし、話がでかすぎてついていけない。
彼はその後何度かたこ焼きやにきた。時にはすごくおいしいケーキをご馳走してくれた。
彼は私の論文を手伝ってくれるということになったもんで、メールと電話番号を交換した。彼は確かに私の論文を見てくれた。でも電話が多かった。
「今度の土曜あいてる?」「サンクスギビング何するの?(一ヶ月以上先)」「君は美しい。」
うざーいと思い始めた私は避けることを決めた。
彼氏がいる(いなかったけど)。美しいなんていわれるとひく。あまりしつこいのは迷惑。とメールで断言。
プライドが高いのか、スルタンは「僕は君が美しいなんていってない!君のスピリットが美しいといったんだ!」などわけのわからない言い訳をはじめた。
あっそ。とほっておいた私に彼は謝る。しかしもう私の目には彼はただの気持ち悪い男でしかない。彼は何とか私の注意を引こうと自分の実家の財産や自分の利口さを示そうとするが、そんなもの面白くともなんともない。私の気を引きたかったら質のいいギャグでも考えて来い。
そして彼は連絡をしてこなくなったし、たこ焼きやにもこなくなった。
ある日、二人の日本人女性がたこ焼きやにきた。
彼女たちはある紙を掲示させてくれときた。
はあ、いいですよ。といって受け取る私。実際あまりポスターなどを貼るのは社長に嫌がられるので、内容を確認することに。
私はIさんに伝えるためにも声に出して読んだ。
「クエート出身の黒人男性スルタン・・・・(長い名前)が過去13年にも渡って、アジア人女性に詐欺をはたらいてだまし、先日逮捕されました・・・。」そこまで読んで我々はとまった。あいつだ・・・。その貼り紙によると、スルタンは実際クエートの王子でもなんでもない。これまでたくさんのアジア人女性をだまし、あるときは窃盗、あるときは結婚詐欺、などで巨額の金額をだまし取ってきた。逮捕暦もある。今回はある日本人女性と交際していたが、(もちろんその女性には自分はクエートの王子で金持ちといってある)9・11のテロ以降、自分の銀行からお金を引き出せなくなった。だから金を貸してくれ。すぐに返すしその後は結婚しよう。といってだまし、彼女のクレジットカードの口座(!)から600万から700万円相当を盗む。彼女の家具とかも。
ひえ~。
新聞にも載ってたよ・・・。しかし何であんなぶさいくにだまされるんだ。愛してしまったのか・・・。3ヶ月程度しか付き合ってなかったみたいなのになんで・・。て言うか私もだまそうとしたわけ~??悪いけど、あんた、問題外だよ。大体私にはそんな金ありません。
しかし私が騙されなかったのは、彼のきもいところとかが大きいけど、結局の彼の失敗は自分が27歳と言ったところ。
どー見ても40代だよ。何度も騙してきたうちに本当に自分がクエートの王子で脳外科医で27歳だと思いこんでしまったのかな。
結局あんたは39歳のアメリカ人、ベンジャミンだよ・・・。